日本消化器内視鏡学会甲信越支部

35. 腫瘍径6mmでリンパ節転移をきたした直腸カルチノイドの1例

佐久総合病院 胃腸科
篠原知明、堀田欣一、森田周子、小山恒男、宮田佳典、友利彰寿、田中雅樹、 高橋亜紀子、古立真一、新井陽子、吉永繁高、北村陽子

 症例は60歳代の男性。便潜血反応陽性の精査で行った大腸内視鏡検査にて,直腸Rbに大きさ8mm大,黄色調の粘膜下腫瘍を認め直腸カルチノイドと診断した。画像診断上,腫大リンパ節はなく中心陥凹も認めないことからEVL deviceを用いた内視鏡的摘除を行った。
 病理組織診断はカルチノイド,sm(2900μm),ly(+),v(-),Ki-67 L.I 1.66,EW(-),6mmであった。リンパ管侵襲陽性のため追加治療として低位前方切除術が施行された。直腸壁内に腫瘍の遺残は認めなかったが,1群(1/6)および2群(1/1) 各々2mm大のリンパ節に転移を認めn2(+)と診断された。
 中心陥凹を伴わない10mm未満のカルチノイドに対しては内視鏡的摘除を治療の第一選択とすることが多いが,脈管侵襲陽性はリンパ節転移の危険因子であり,小病変でもリンパ節郭清を考慮する必要があると考えられた。