日本消化器内視鏡学会甲信越支部

34. 内視鏡的に摘出し得た大腸異物(ドライバー)の1例

JA長野厚生連 北信総合病院 消化器科
油井 薫、藤井俊光、大木史郎、佐藤淳一、田尻和男
同 外科
小林直紀、伊藤勅子、芳澤淳一、五十嵐淳、藤森芳郎、山岸喜代文、西村博行

 症例は62歳男性。平成18年3月31日宴会で泥酔時にドライバーとボールペンを飲みこんだ。翌日朝より暗赤色の血便あり、徐々に立ちくらみが強くなり歩行困難となったため4月5日近医受診した。腹部単純X線にて右下腹部に二つの棒状異物が認められたため当院外科紹介となった。腹部単純X線および腹部CT上遊離ガスは認められず、異物は小腸で停滞していると考えられたため開腹手術となった。開腹時異物は横行結腸まで進行しており腸管の穿孔も認められなかったため、大腸内視鏡による摘出を行った。スライディングチューブ挿入後に異物端をスネアで把持しスライディングチューブ内に引き込み、経肛門的に異物を摘出した。
 大腸異物は全消化管異物の約1.5〜5%であり、胃に到達した異物の80〜90%は自然排出されるといわれているが、先端が鋭利な異物では消化管穿孔や出血を引きおこし外科的処置が必要な場合が少なくない。また経口的な異物は長径5cm、幅2cmを超えるものは胃を通過しないとされており、内視鏡的異物除去術は上部消化管においては一般的であるが、下部消化管では比較的稀である。 今回我々は横行結腸まで自然通過した大腸異物を用手補助下にスライディングチューブを併用し内視鏡的に摘出し得た一例を経験したため報告する。