日本消化器内視鏡学会甲信越支部

18. ブルンネル腺由来と考えられた十二指腸腺癌の1例

山梨県立中央病院 消化器内科
辰巳明久、小嶋裕一郎、猪野友里、古谷英人、三澤綾子、鈴木洋司、望月 仁、廣瀬雄一、高相和彦
同 外科
川井田博充、羽田真朗
同 病理
小山敏雄

 症例:83歳、男。主訴:タール便。現病歴:2005年4月タール便有り。このため近医受診。上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部後面に隆起性病変有り。生検にて腫瘍性変化はなく同年10月経過観察の上部消化管内視鏡検査を実施。このときの生検で管状腺癌が疑われ、同年11月当科紹介受診。上部消化管内視鏡検査で球部後面に大きさ約10mmの周囲粘膜と同様の粘膜で覆われた隆起性病変を認め、頂部の粘膜は欠損し乳頭状の構造を認めた。同部の生検で高分化型管状腺癌が認められた。超音波内視鏡検査では筋層は保たれていたが内視鏡的に粘膜下層は不明瞭であり、内視鏡的切除は困難と考えられ外科切除を実施した。切除標本では。癌はすべてブルンネル腺に囲まれており、かつ腺管単位で周囲のブルンネル腺を置換していた。癌は最深部では粘膜下層に達していたが、間質浸潤は明らかではなかった。免疫組織化学では、MUC6はブルンネル腺および癌にびまん性に染まり、MUC2は陰性であった。以上、ブルンネル腺由来と考えられる十二指腸腺癌を経験したので、文献的考察を加えて報告する。