日本消化器内視鏡学会甲信越支部

14. 胃石により急性胃拡張所見を呈した1例

新潟市民病院 消化器科
岩本靖彦、古川浩一、滝沢一休、池田晴夫、相場恒男、米山 靖、和栗暢生、 五十嵐健太郎、月岡 恵

 症例は76歳女性。嘔吐を主訴に受診。現病歴では、2002年12月よりパーキンソン氏病で当院神経内科通院中、心窩部不快感にて2002年12月、2004年4月と2回の上部消化管内視鏡検査を施行しているものの特記すべき所見を認めなかった。2005年12月17日より頻回の嘔吐があり当院救急外来を受診。身体所見では腹部に腹膜刺激徴候は認めなかったものの上腹部を中心に膨隆を呈していた。腹部単純X線では立位にて腹腔全体にわたる胃の輪郭線と側臥位で横隔膜から骨盤腔にまで及ぶ胃泡を認めた。CT所見では胃前庭部に球形の異物と幽門輪に嵌頓する腫瘤様所見を認め、幽門部での閉塞による急性胃拡張と診断。入院後、経鼻胃管による減圧をはかるとともに上部消化管内視鏡検査を施行。胃内に直径5cmと3cmの胃石を確認し、幽門輪への再陥頓と落下後の腸閉塞を予防するためバスケット鉗子で粉砕回収した。粉砕片の成分分析ではタンニンが98%であった。本邦における胃石は植物胃石が多く柿胃石がその大半を占めると報告されている。本症例においては柿を多量に食するなどの偏食は認めなかったことから、パーキンソン氏病に伴う服用薬、胃運動の低下が関与しているものと推察された。