日本消化器内視鏡学会甲信越支部

13. 化学放射線療法を行ったstage IV胃癌の1例

市立甲府病院 消化器科
進藤浩子、大高雅彦、青木いづみ、嶋崎亮一、若宮 稔、三浦美香、俵 章夫、赤羽賢浩
同 放射線科
小宮山貴史
山梨大学 医学部 第一内科
榎本信幸

 胃癌治療ガイドラインに「胃癌は放射線に対する感受性が低く、本療法のみでは根治性を求めることはできない。」と記述があり積極的に行う機運はなかった。今回、化学放射線療法でPRを得た症例を経験したので報告する。症例は80歳、女性。2005年2月より心窩部痛が出現し近医を受診した。腹部CTで多発肝腫瘤と胃周囲LN腫大を指摘され当院紹介となった。3月4日上部消化管内視鏡検査を行い、胃体上部から胃角部まで至る小弯に潰瘍性病変を認めた。生検で中〜低分化型腺癌であった。多発の肝腫瘤に生検を行っていないものの転移と考えstage IV、3型胃癌と診断した。TS-1 を通常量内服を試みたが、内服開始後3日ほどで口内炎が出現し食思不振となるため隔週投与とした。2ヵ月後の内視鏡では病変の著明な縮小を認め(PR)、3ヵ月後にはさらに縮小していた。腹部超音波検査では肝転移巣とLN腫大の縮小が見られた。しかし、5ヵ月後の内視鏡検査では潰瘍底であったところに隆起が形成され、6ヵ月後にはさらに増大していた。CDDP 25mg/m2+TS-1 80mg/m2に変更したが、全身倦怠感、嘔吐が出現し2回で中止した。その後はCDDP 6mg/m2+CPT-11 60mg/m2を行った。転移巣は縮小した状態を維持していたが、原発巣が増大しているため4回目のレジメン変更を行った。TS-1 60mg/m2を3週間、CDDP 6mg/m2を間歇投与5日間連日投与2日間休薬3週間、さらに放射線療法は原発巣を中心に周囲LNを含め2Gy x 5/week, total 40Gyを行った。副作用としては、20日目より食思不振と悪心が出現し、NCI-CTC grade 2の白血球減少・貧血・血小板減少を認めた。上記レジメン終了時のCTでは、肝転移巣はわずかなlow density areaを呈すのみとなり、LNの腫大は認められなかった。内視鏡では腫瘍の縮小を認めた(PR)。TS-1に含有されるギメラシルはX線との併用でX線の感受性を増強することが非小細胞肺癌株のin vivo試験で報告されている。今後のstage IVや高齢者胃癌の治療戦略としてTS-1と放射線併用が有効と思われ報告する。