日本消化器内視鏡学会甲信越支部

11. 術前に腫瘍進展範囲の評価が困難であった噴門部胃癌の1例

飯田市立病院 外科
野竹 剛、金子源吾、平栗 学、堀米直人
同 消化器科
野 洋、白?久美子、山浦高裕、岡庭信司、中村喜行
同 臨床病理科
金井信一郎、伊藤信夫

 症例は63歳の女性。主訴は心窩部痛。上部消化管内視鏡検査でCardia直下小弯に褐色調の陥凹病変(0-c)を認めた。病変からの生検の結果はgroup( por+sig )、病変から3cm肛門側の粘膜より行ったstep biopsyの結果はgroupであった。上部消化管造影では噴門部小弯に1cm程度の壁不整像を認めるのみで病変は限局しているものと考えられた。早期胃癌の診断にて噴門側胃切除術を行う方針で手術を開始。術前にマーキングしたクリップを参考に腫瘍より2cm程離して肛門側切離線を設定し噴門側胃切除を行った。摘出した胃を術中迅速診断に提出したところ、口側、肛門側ともに断端陽性であったため、食道側を1cm、肛門側を2cm追加切除した。食道側は断端陰性であったが、肛門側は腫瘍の遺残ありとの診断であった。腫瘍は胃壁内を広範囲に進展しており胃の温存は不可能と判断して胃全摘術を施行した。術前の画像診断では腫瘍進展範囲の評価が困難な症例であった。