日本消化器内視鏡学会甲信越支部

8. 酢酸併用拡大内視鏡を用いたESD切除標本の胃癌pitsの検討

新潟県立吉田病院 内科
八木一芳、渡辺 順、中村厚夫、関根厚雄

 切除された胃癌の新鮮標本に酢酸を散布し拡大内視鏡観察を行うとピット・パターンが詳細に観察できる。拡大内視鏡で観察される胃癌の微細血管がどのような形態学的構造を反映しているのかを検討するためESD切除標本を酢酸併用拡大観察にて検討した。21例の分化型早期胃癌(陥凹型12例、隆起型9例)を拡大内視鏡で観察後、ESDにて切除した。切除標本を全例酢酸散布で拡大観察した。切除標本の酢酸散布では癌のPits patternは円形の腺開口部が並ぶsmall round pits、楕円形の腺開口部のoval round pits、顆粒模様のgranular pattern、非癌粘膜類似のtubular patternに分けられた。前者の3型は非癌粘膜に比し明らかに小さなpitsであった。21例のうち2例はsmall round pits、10例はsmall round pitsとoval round pitsの混合、6例はsmall roundとgranularの混合、3例はtubularであった。この検討より癌の微細血管は細かなpitsの周囲を取り囲みその形状を模倣するように走行することが判明した。Pitの観察は癌の微細血管構築の背景を検討するのに有用であった。