日本消化器内視鏡学会甲信越支部

068 潰瘍性大腸炎(UC)に合併したdysplasiaに対しESDを施行した1例

佐久総合病院 胃腸科
佐田 竜一、小山 恒男、宮田 佳典、友利 彰寿、堀田 欣一、森田 周子、田中 雅樹、高橋 亜紀子、古立 真一
佐久総合病院 内科
高松 正人、古武 昌幸

 【症例】他院にてUC(total colitis)の治療を十数年間受けていた50代、男性。大腸内視鏡(CS)にてRa後壁に平坦隆起を認め、生検にてgroup4と診断された。患者が手術を拒否し、ESDを希望したため当院に紹介された。当院受診時、便回数1〜3回で腹痛や粘血便は無く、5-ASA1500mg・PSL7.5mg内服中であった。UCに伴うdysplasiaは基本的に大腸全摘術の適応であること、UC合併例に対するESDは剥離が難しく穿孔の危険が高いことを説明した上でESDを施行した。病変周囲に多発の瘢痕を認め、ヒアルロン酸ナトリウムを局注に用いたが線維化のため病変の挙上は不良であった。Flex knifeで粘膜切開した後Hook knifeで剥離を行ったが、粘膜下層の線維化が強く剥離は困難であった。剥離の際に筋層を一部損傷しClippingを施行した。病理診断はhigh grade dysplasia, 34x30mm, LM(-), VM(-)であった。翌日に39℃の発熱と、腹部全体の自発痛、圧痛・反兆痛を認め、腹骨盤CTにて多量の腹腔内free airと後腹膜気腫を認めたが、再施行したCSでは明らかな穿孔を認めなかった。以上よりMicro-perforationに伴う腹膜炎と診断し、S状結腸に胃管用カテーテルを留置後、抗生剤(FMOX2g・MEPM1g/day)を使用し保存的に治療した。2日目には解熱し4日目には腹部症状が消失したためカテーテルを抜去した。6日目の腹骨盤CT で後腹膜気腫の減少を認めたため、同日食事を再開し11日目に軽快退院した。【結語】UCでは、dysplasia-carcinoma sequenceによる発癌が知られており、本例のようなdysplasiaには基本的には大腸全摘術が推奨される。しかし、UCの治療状態が良好で、全大腸の詳細観察が可能であり、単発性のdysplasiaのみが認められる症例に対しては、ESDを行うことで大腸全摘術を延期できる可能性がある。