日本消化器内視鏡学会甲信越支部

069 内視鏡的切除術を行った直腸マラコプラキアの1例

新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野
丹羽 恵子、渡辺 和彦、田村 康、横山 純二、小林 正明、杉村 一仁、成澤 林太郎、青柳 豊
新潟大学大学院医歯学総合研究科 分子・診断病理分野
西倉 健、味岡 洋一

 症例は64歳、男性。慢性関節リウマチで当院通院し、プレドニゾロン(7.5mg)処方されていた。1991年下痢に対して行われた大腸内視鏡検査(CF)にて大腸アミロイドーシスと診断された。1995年腎アミロイドーシスに伴う腎障害出現、2005年3月から血液透析を開始した。2003年8月大腸癌検診で便潜血反応陽性であったため、CFを施行し、大腸腺腫内癌に対し内視鏡的切除術(EMR)を施行した。以後多発する腺腫に対して半年に1回CFを行っていた。2005年5月CFにて直腸に3mm大、軽度発赤調の半円球状隆起性病変を認めた。拡大観察を用いるも表面には腫瘍性変化はなく、カルチノイド腫瘍を疑いnon-lifting sign陰性のためEMRを施行した。病理組織学的には粘膜固有層にマクロファージが多数集簇して結節を形成していた。これらはPAS陽性顆粒を持ちHansemann細胞と考えられマラコプラキアと診断した。1990年以降の医学中央雑誌WEBにてマラコプラキアを検索したところ73例あり、大部分が泌尿生殖器系(65件、89%)で、消化管マラコプラキアはわずか6例であった(8%)。内視鏡・肉眼像は、大きさ10mm以下で単発から多発、扁平隆起ないしは山田II〜III型のポリープ様のものが多く、なかには粘膜下腫瘍様の形態の報告例もみられた。近年大腸内視鏡検査がめざましく増加しているのにかかわらず、本症の報告が少ないのは、本症例のような小さな病変が内視鏡あるいは病理学的に見過ごされている可能性も否定できない。今回詳細な内視鏡像を観察し得た症例として文献的考察を含めて報告する。