日本消化器内視鏡学会甲信越支部

067 大腫瘤形成型大腸癌の3例

長野県立木曽病院 外科
小山 佳紀、江口 隆、北原 弘恵、久米田 茂喜
長野県立木曽病院 内科
小松 健一、高山 真理、飯嶋 章博
信州大学病理学教室
下条 久志

 【症例1】90歳男性.主訴:血便.横行結腸癌の診断で1999年8月に手術を施行.術中所見では約15cmの腫瘤を形成しており,肉眼的に大網浸潤と小腸間膜浸潤が疑われ,小腸間膜合併切除を含め横行結腸切除術を行った.病理結果は135x115mm,type5,壁外発育型,mucinous carcinoma>>moderately differentiated adenocarcinoma,ss,ly3,v3,n3(+),ow(-),aw(-),ew(+)(リンパ管断端),stageIIIbであった.深達度は術中所見とは異なりssであったが,リンパ管・静脈侵襲,リンパ節転移が著明で,ew(+)症例である.しかし,術後6年が経過した現在も無再発生存中である.【症例2】77歳女性.主訴:左上腹部腫瘤の自覚.横行結腸癌の診断で2005年3月に手術を施行.術中所見では10cmを超える腫瘤を形成しており,腹壁,胃を巻き込み一塊となっており,treitz靱帯への浸潤も疑われた.これらの合併切除を含め横行結腸切除術を行った.病理結果は70x60mm,type2,well differentiated adenocarcinoma,ss,,ly0,v0,n(-),ow(-),aw(-),ew(-),stageIIであった.浸潤と思われた部位はabscessの形成や炎症所見を伴う線維性結合組織であった.【症例3】77歳女性.主訴:食欲不振,貧血.盲腸〜上行結腸癌の診断で2005年7月に手術を施行.術中所見では約10cmの腫瘤を形成しており,大網,横行結腸の一部,腸間膜,虫垂を巻き込み一塊となっており,更に背側の骨盤筋に固定されており,肉眼的にこれらの組織への浸潤が疑われた.これらの合併切除を含め右半結腸切除術を行った.病理結果は65x90mm,type2,poorly differentiated adenocarcinoma> well differentiated adenocarcinoma,ss,,ly1,v2,n(-),ow(-),aw(-),ew(-)であった.周囲組織への浸潤が疑われたが,ssで,かつ,複数のリンパ節の腫大を認めN1(+)と考えられたが,n0であった.【結語】しばしば,大腫瘤を形成した進行大腸癌に遭遇する.これらの中にはリンパ管・静脈侵襲,リンパ節転移が著明であっても予後が期待できるもの,腫瘍先進部の炎症の併発により周囲組織を含めた大腫瘤を形成するが,進行度は術中所見より低いもの,腫瘍自体が真に大きくてもリンパ節転移を伴わず予後が期待できるもの,等が含まれると考える.若干の文献的考察を含め報告する.