症例は38歳、女性。主訴は左下腹部痛。2005年6月14日夕、左下腹部痛と冷汗が出現し某院救急外来受診。腹部超音波検査、CTにて左腸腰筋外側に巨大な腫瘤を指摘された。補液、抗生剤投与にて疼痛は軽快したため、翌日当科を紹介受診し同日入院となった。これまでに月経周期性の変化は認めていない。来院時、左下腹部に手拳大の腫瘤と軽度の圧痛を認めるも自発痛はなかった。腹部単純X線写真で左下腹部に嚢胞状陰影を認め、腹部超音波検査では長径12cmの嚢胞状腫瘤であった。下部消化管内視鏡検査では下行結腸に通過障害を認め、フード使用するも内腔は観察できなかった。注腸造影にて狭窄部はapple-core sign様に観察されたが体位変換により変化することから、嚢胞性腫瘤による圧排像と考えられた。イレウス様症状が出現したため緊急手術を実施した。切除標本では下行結腸を巻き込むように10×8cmの嚢胞性病変が認められた。組織学的には嚢胞内腔面に一層の上皮を認め、部分的には多房性であった。上皮は内膜腺上皮と考えられ、免疫組織化学的検査ではCdx2(-)にて大腸粘膜の所見は認めなかった。嚢胞内には切片上2箇所に癌を認めたため、下行結腸腸間膜由来で癌を合併した異所性子宮内膜症と診断した。興味深い症例と思われ、文献的考察を加えて報告する。