日本消化器内視鏡学会甲信越支部

063 クローン病の回腸上行結腸吻合部狭窄に対し、繰り返し施行された内視鏡的狭窄部拡張術後に生じた吻合部出血の1例

白根健生病院 消化器内科
石塚 基成、上野 亜矢

 症例は41才、男性。1984年に下痢・下血・肛門部病変にて発症し回盲部切除を施行され、この時の組織標本にてクローン病と診断された。その後、経腸成分栄養療法・5ASAを中心に加療されている。現在までに小腸狭窄のため、1994年に回腸切除・狭窄部形成術、1997年に回腸部分切除・回腸上行結腸吻合部切除・再吻合術、2003年10月に小腸部分切除術を施行された。特に回腸上行結腸吻合部の再切除・吻合術後に吻合部狭窄を繰り返しており、狭窄部に対して、2003年6月および2004年3月に内視鏡的バルーン拡張術を施行された。更に2005年5月31日に3回目の内視鏡的バルーン拡張術を施行したところ、術後より大量の新鮮血下血が生じた。自然経過にて止血せず6月4日に入院となり、出血箇所の確認目的に6月6日に大腸内視鏡を行ったところ、回腸上行結腸吻合部狭窄の拡張による裂創部に露出血管を認めた。これが出血源と考えられたため止血鉗子を用いて血管の凝固焼灼を施行。その翌日から下血は消失した。その後経過は順調にて6月18日に退院となった。クローン病に生じる腸管狭窄に対し、内視鏡的バルーン拡張術は侵襲の少ない治療として注目されているが、同一部位に対し繰り返された場合、本症例のように血管の露出を招いて術後出血を生じる可能性があることに注意が必要であると考えられた。これまでクローン病における内視鏡的吻合部拡張術後の出血は報告が認められず、貴重な症例と考え報告する。