日本消化器内視鏡学会甲信越支部

061 総腸管膜症による腸軸捻転を発症し、腸管嚢状気腫(PCI)をきたしたと思われるウェゲナー肉芽腫症の一例

新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野
渡辺 和彦、関根 有美、丹羽 恵子、田村  康、塩路  和彦、横山  純二、小林 正明、杉村  一仁、青柳 豊
新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器・一般外科学分野
番場 竹生、川原 聖佳子、丸山 聡、岡本 春彦、畠山 勝義
新潟大学大学院医歯学総合研究科 内部環境医学講座
成田 淳一、下条 文武

 症例は23歳、女性。1999年よりウェゲナー肉芽腫症に対してステロイド内服が開始され、2003年5月よりメトトレキセート内服が併用された。2004年11月頃から間欠的な腹痛が出現し、2005年1月腹部X線、CTにてPCIの所見を認め、同年5月大腸内視鏡で上行結腸にPCIを認めた。6月14日に左上腹部に激痛が出現したため、翌日当院に入院。CTにて腸軸捻転、腸回転異常、PCIの所見を認め、腹痛の原因と考えられた。保存的治療では改善しないため、6月23日開腹手術を施行された。腸回転は正常であったが、空腸から横行結腸の腸間膜が後腹膜に固定されておらず、総腸間膜症による腸軸捻転と診断した。捻転した部位に限局してPCIの所見を認めた。捻転の解除、腸間膜の索状構造の切離を行い、腸管固定術を施行した。その後症状の再燃は認めていない。PCIの原因として細菌説、化学説、機械説などが挙げられているが、本例では捻転による腸管内圧の上昇がPCIの発症に関与している可能性があり、発症要因を考える上で貴重な症例として報告する。