日本消化器内視鏡学会甲信越支部

060 イレウス術後に発症した頸椎化膿性椎間板炎の一例

新潟県立十日町病院外科
大槻 将、福成 博幸、藤森 喜毅、設楽 兼司、桐原 正人、林 哲二

 症例は56歳男性。23年前の十二指腸潰瘍術後の繰り返すイレウスに対し、H16.7.16イレウス解除術を施行。術後MRSAによるCVカテーテル感染により敗血症をきたし、VCMを使用した。その1週間後に両上肢の痺れが出現。MRIにてC5/6に硬膜外膿瘍を認め、化膿性椎間板炎に伴う硬膜外膿瘍と診断され、前方アプローチによる病巣掻爬と腸骨による前方固定術が施行された。近年、腹部手術後のいわゆるcompromised host状態となった患者における化膿性脊椎炎の報告が多く見られており、その多くは腰椎または胸腰移行部に集中している。今回われわれが経験した症例では患者は56歳と若く、手術としても腸切を必要としないイレウス解除術後であったにもかかわらず、CVカテーテル感染のみから頸椎の化膿性椎間板炎を合併した。重篤な感染症状が出現した場合、速やかにその原因となる感染源を同定することはもちろんのこと、化膿性脊椎炎の可能性を十分考慮し、神経症状が出現した場合適切な検査と早期の治療が必要と思われた。