日本消化器内視鏡学会甲信越支部

059 外傷性遅発性小腸狭窄の1例

山梨大学 医学部 外科学講座第1教室
上村 和康、飯野 弥、森 義之、相川 琢磨、藤井 秀樹

  交通事故による腹部鈍的外傷後、腹膜炎症状、炎症所見を呈さずに、46日目に外傷性小腸損傷を原因として腸閉塞をきたし,52日目手術に至った症例を経験したので,報告する。 症例は47歳 男性。2003/12/19軽トラック運転中,4連玉突き事故の最後尾で衝突し,右頚骨開放骨折受傷し,当院整形外科入院。12/20より食事開始後腹痛出現のため,絶食とし,血液検査,腹部CT検査施行するも異常認めず12/26食事再開。12/30より再び腹痛出現し,腹部CT検査,上部消化管内視鏡検査,下部消化管内視鏡検査,腹部超音波検査施行したが,原因不明で機能性胃腸症と診断された。2004/2/13整形外科的には軽快し退院となったが,腹痛のため近医受診し,腹部単純X線上イレウスと診断され,当院内科紹介受診,入院となった。体温・血圧は正常で腹部膨満し右下腹部に軽度の圧痛を認めた。WBC5610/μl、 CRP 0.3mg/dl、上・下部内視鏡検査,CT検査上異常を認めなかった。入院後イレウス管挿入にて症状軽快。2/17イレウス管造影にて小腸に著明な狭窄を認め2/19当科転科・イレウス解除術施行となった。手術所見では、右下腹部に癒着して一塊となった小腸を認め、回腸末端部より15cm,30cm,65cm,90cmの部位でループを形成して癒着していた。口側小腸は拡張し,壁に浮腫を認めた。外傷性小腸穿孔部が周囲腸管にて被覆され腹膜炎を免れたが,狭窄を呈しイレウスを発症したものと判断。癒着腸管を剥離し,回腸末端部から65cmの部分を約10cm切除し,端々吻合した。標本は、粘膜面に15×10mmの潰瘍形成を認め、穿孔と思われる孔を認めた。。病理組織診断では、外傷性小腸穿孔あるいは外傷性潰瘍形成と診断。術後経過良好にて3/6退院。2004/4/5終診となった。