日本消化器内視鏡学会甲信越支部

057 原因不明の消化管出血診断にダブルバルーン内視鏡が有用であった一例

新潟市民病院 消化器科
古川 浩一、滝澤 一休、池田 晴夫、岩本 靖彦、相場 恒男、米山 靖、和栗 暢生、五十嵐 健太郎、月岡 恵
新潟中央病院
中嶋 孝司

 【症例】54歳男性。主訴はめまい、嘔気。既往歴では昭和57年5月(31歳時)末端肥大症にて当院脳外科で下垂体腺腫切除。昭和62年9月(37歳時)出血性十二指腸潰瘍の診断にて胃部分切除。53歳交通事故(腹部外傷なし)。【現病歴】平成17年4月中ごろより血液を混じる小量頻回排便あり4月22日当科初診。外来で消化管を中心に精査予定であったが、4月23日食後にめまいあり、近医に救急車にて搬送される。その際、血圧91/75mmHgと低下、眼球結膜に貧血を認めた。輸液にて症状改善し、入院精査目的に4月25日当科転院。上部消化管内視鏡では残胃所見の他には異常を認めず、大腸内視鏡検査でも出血をきたす病変は認めなかった。その後出血もなく経過し4月28日退院。外来医より便通改善薬などにて経過観察されていたが、5月22日10時頃、排便後にめまい、嘔吐出現し、救急搬送となる。来医院時血圧呼吸状態は安定していたが、直腸診での潜血反応陽性、血算にて貧血の進行を認め消化管出血が疑われ再度入院となる。【経過】出血シンチグラフィでは出血点を認めず、腹部・骨盤部CTで異常なく、小腸造影にても異常は認めなかった。除外診断として小腸出血が疑われ5月29日退院し、ダブルバルーン内視鏡目的に6月20日新潟中央病院消化器科入院。経肛門的に小腸の3分の2程度を観察。翌21日に経口的に小腸を観察。上部回腸に血管腫様の怒張した血管を多数認め、同部よりの消化管出血と診断した。後日、当科にて腹部血管造影検査を実施したが門脈圧亢進、動静脈奇形、先天性血管腫を示唆する典型所見は認めなかった。2回目の入院後は出血を認めず本人希望もあり外来にて経過観察中である。【結語】従来の種々の検査法にて確定診断に至らない小腸出血に対し、ダブルバルーン内視鏡により原因が特定された症例と考えられた。