日本消化器内視鏡学会甲信越支部

056 ダブルバルーン小腸内視鏡にて広範なskip病変を認めた小腸follicular lymphomaの一例

信州大学 医学部附属病院 消化器内科
北原 桂、松田 賢一、小松 通治、尾崎 弥生、白川 晴章、須澤 兼一、村木 崇、横沢 秀一、新倉 則和、越知 泰英、清澤 研道
信州大学 医学部附属病院 内視鏡診療部
赤松 泰次、井上 勝朗
信州大学 医学部附属病院 臨床検査部
金子 靖典

 症例は59歳男性。生来健康であったが、2005年5月の人間ドックにて上部消化管内視鏡検査を施行したところ、十二指腸下行部の十二指腸乳頭部近傍とその対側に白色調顆粒状病変を指摘された。生検組織検査にて粘膜固有層から粘膜筋板にかけて境界明瞭なリンパ濾胞状構造を認め、免疫染色にてCD20、bcl-2、CD10陽性であったことから十二指腸follicular lymphoma(grade 2)と診断された。FDG-PET検査にて左上腹部に2cm弱の結節状集積を認めたが、胸腹部CT検査上リンパ節腫脹や多臓器浸潤はなく、下部消化管内視鏡検査でも異常は認めなかった。骨髄穿刺ではリンパ腫細胞の浸潤は認めず、Stage Iと考えられた。経口的にダブルバルーン小腸内視鏡検査を行って深部小腸を検索したところ十二指腸水平部から空腸にかけて同様の病変を7つ認めた。当初十二指腸病変に対し放射線療法を予定していたが、肛門側への広範なskip病変を認めたことから放射線療法は断念しリツキシマブを含めた化学療法を行う予定である。十二指腸follicular lymphomaにおいて深部小腸の検索を行うことは治療方針を決定する上で重要であり、その際にダブルバルーン小腸内視鏡が有用であった。