日本消化器内視鏡学会甲信越支部

055 malignant小腸GISTの一例

国立病院機構中信松本病院 消化器科
児玉 亮、菅 智明、小林 正和、市川 真也、袖山 健
国立病院機構中信松本病院 外科
荒井 正幸

 症例は65歳、男性。下腹部に強い痛みを自覚し下痢が出現したため、近医を受診した。急性胃腸炎と診断され内服加療を受けた。痛みは軽減したが鈍痛が続くため当科外来を受診した。右下腹部に腹膜刺激症状を認め、WBC 10700/μl, CRP 7.7mg/dlと高値を認めた。CTにて下腹部に10×10×6cmの腫瘤を認め、内部に気体を認めた。膿瘍または腫瘍が疑われ、精査加療のため当科入院となった。絶飲食として抗生剤にて治療を開始した。4週間加療を行ったが腹痛・炎症所見残存し病変の大きさにも変化を認めないことから外科的治療が必要と考えられ手術を行った。病変は10×11.5×3.0cmの大きさで内腔に膿汁が貯留していた。一部は小腸と癒着しており小腸合併切除も行った。病理では小腸粘膜下から漿膜側へ発育する腫瘍であり、密度の高いspindle cellの束状増生を認めた。免疫染色ではS-100蛋白陰性、SMA陰性、c-kit陽性、CD34陽性であり狭義のGISTと診断された。現在Imatinibにて追加治療中である。本症例ではCTで膿瘍を疑わせるairの存在を認めたことから膿瘍と腫瘍との鑑別が問題であった。