日本消化器内視鏡学会甲信越支部

054 カルチノイドを合併した多発小腸GISTの一例

独立行政法人 国立病院機構 長野病院 消化器科
張 淑美、藤森 一也、中辻 良幸、滋野 俊
独立行政法人 国立病院機構 長野病院 外科
土屋 拓司
独立行政法人 国立病院機構 長野病院 研究検査科
前島 俊孝

 症例は54歳女性。既往歴は40歳で舌下腫瘍手術、43歳子宮筋腫手術、44歳胃潰瘍、鉄欠乏性貧血。このとき上部消化管内視鏡検査ではH1潰瘍を認め、腹部CT施行されたが異常なかった。平成17年5月6日に黒色便を認め、9日当科外来受診し精査のため入院となった。Hb6.2g/dlで鉄欠乏性貧血を認めた。上下部消化管内視鏡検査は異常なかったが腹部CT上、上部回腸に3箇所の2〜4cmの血流豊富な腫瘤を認め、GISTが疑われた。小腸造影でも同様に腫瘤影が認められ、出血源と考えられた。5月30日外科手術が行われ空腸起始部から50cmほど肛門側に巨大GISTを20〜30cm毎に認めた。その他粒状の腫瘤も小腸から回盲部全域まで漿膜側に多数認めた。これらはCD34、CD117(kit)陽性であり、小腸多発GISTと診断された。また空腸より30cmにリンパ節腫大を認め、迅速診断によりカルチノイド転移と判明した。術中、原発を検索したところその上流空腸にリンパ流域に小腫瘤を認めカルチノイドと診断された。粘膜面はびらんを呈しており、消化管出血はこれによると考えられた。術後、下血や鉄欠乏性貧血の再燃を認めていない。