日本消化器内視鏡学会甲信越支部

050 超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診(以下EUS−FNA)が診断及び治療選択に寄与した胆管原発小細胞癌の一例

信州大学消化器内科
尾崎 弥生、村木 崇、武藤 英知、小松 健一、濱野 英明、新倉 則和、越知 泰英、川 茂幸、清澤 研道

 【目的】胆管小細胞癌は極めてまれで通常型の胆管癌として手術した後に,病理所見にて初めて診断される症例が多い.今回われわれは,EUS-FNAにて確定診断に至り,放射線および,化学療法が奏効した胆管原発小細胞癌の1例を経験したので報告する.【症例】75歳,男性.2004年11月下旬より食欲低下,12月下旬より皮膚黄染,褐色尿を認め,2005年1月近医にて閉塞性黄疸を指摘され当科紹介入院となった.腹部CT,MRIにて膵頭部背側から肝十二指腸間膜に胆管を取り巻くように造影効果を伴う多結節性の腫瘤を認め、画像上悪性リンパ腫が強く疑われた.胆管生検では炎症所見しか得られなかったため, EUS-FNAを施行した.免疫染色でクロモグラニンA陽性,シナプトフィジン陽性のN/C比の高い腫瘍細胞を認め,小細胞癌と診断した.全身検索にて肺,その他の臓器に原発を示唆する病変を認めず,転移性は否定的であったことから胆管原発小細胞癌と診断した.閉塞性黄疸に対して,胆管ステント及び経鼻胆道ドレナージを行うも減黄不良で化学療法を導入できなかったため,まず局所のコントロール目的に同年2月上旬より放射線治療(30Gy)を施行し,黄疸は著明に改善した.続いて肺小細胞癌に準じCDDP+CPT-11による化学療法を計4コース施行したところ,腫瘤は著明に縮小し, ERCでも胆管狭窄は改善した.現在化学療法後3ヶ月となるが腫瘍増大を認めていない.【結語】1)胆管小細胞癌は術前診断が困難であるが,本症例では,EUS-FNAが診断に有効であった.2)本例では,当初胆道ドレナージに不応性の黄疸を認めたが,放射線治療を行うことで減黄し,化学療法を導入できた.3)胆管小細胞癌は,手術による予後の改善が期待できず,化学療法が治療の中心になるが,肺小細胞癌と同様,高率に再発,転移をきたすため,注意深い経過観察が必要である.