日本消化器内視鏡学会甲信越支部

049 choledochoceleに発生し診断が困難であった十二指腸乳頭部癌の一例

新潟県立がんセンター 外科
野村 達也、土屋 嘉昭、梨本 篤、薮崎 裕、瀧井 康公、中川 悟、砂川 宏樹、田中 乙雄
新潟県立がんセンター 内科
秋山 修宏、本山 展隆
新潟県立がんセンター 病理
太田 玉紀

 【症例】75歳、女性。2004年5月上腹部痛が出現し、近医を受診した。上部消化管内視鏡にて十二指腸乳頭部(以下、乳頭部)の3cm大の腫張を認め十二指腸乳頭部癌を疑われ、6月2日当科紹介入院となった。前医での乳頭部の生検結果は炎症性変化であった。当科にての上部消化管内視鏡でも生検結果は同様に炎症性変化であった。腹部CTでは乳頭部は3cm大で嚢胞状に腫張、十二指腸内腔に突出し、総胆管・肝内胆管は軽度拡張していた。ERCPでは下部胆管の狭窄を認め、乳頭部では嚢胞状でcholedochoceleと考えられた。再度生検施行したが炎症性変化のみで乳頭部癌の確診に至らず一旦退院した。同年7月にEST施行し、露出した胆管粘膜からの生検結果でも悪性所見が得られず外来にて経過観察となった。同年12月に上部消化管内視鏡を施行し乳頭部は開口部の口側にびらんを伴った粘膜下腫瘍様の形を示し開口部と粘膜下腫瘍用のびらん部分からの生検にて高分化腺癌の結果を得た。2005年1月全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した。病理結果は3.3×3.2cm、高分化腺癌、占拠部位Acbd、肉眼型は分類不能、深達度mであった。術後19日目に退院した。【考察】choledochoceleは十二指腸壁内胆管の嚢腫で先天性胆道拡張症に含まれるまれな病態である。choledochoceleに発生した乳頭部癌の報告例では嚢腫内のアミラーゼ値が高値を示し、膵胆管合流異常症と同様の機序での発癌のリスクが考えられている。choledochoceleでは嚢腫内の発癌を考慮した精査や経過観察が必要と考えられた。