日本消化器内視鏡学会甲信越支部

046 多発肝転移を呈し化学療法が著効した膵グルカゴノーマの1例

山梨県立中央病院 消化器内科
松井 啓、小嶋 裕一郎、古谷 英人、鈴木 洋司、廣瀬 雄一、望月 仁、高相 和彦
山梨県立中央病院 病理
小山 敏雄

 症例45歳男性。主訴は体重減少、食欲不振。2001年の健診で肝腫瘍を指摘されるも放置。2003年体重減少を主訴に某院受診。多発肝腫瘍に対し腫瘍生検を行いグルカゴノーマと診断されるも本人の希望にて加療せず。2005年4月頃より食欲不振、体重減少認め5月当科受診。肝胆道系酵素の上昇、糖尿病、およびCTにて膵尾部に石灰化を伴う腫瘤と多発する肝腫瘍を認めたため、入院となった。壊疽性遊走性紅斑を体幹部に認めた。入院時血液検査にて空腹時血糖 139、HbA1c 5.9、AST 34、ALT 63、ALP 1853、血清グルカゴン値 1800 pg/ml、総アミノ酸 867.4 nmol/mlであった。腹部血管造影では膵尾部と肝内に多発する腫瘍濃染像をみとめた。肝腫瘍生検にて異型細胞の充実性増生を認め、免疫組織化学染色にてchromograninA陽性、synaptophysin強陽性、glucagon陽性で膵グルカゴノーマの多発肝転移と診断した。成長ホルモン 9.12 ng/mlと高値を示したため、頭部MRI施行。下垂体前葉は、T1強調矢状断にて雪だるま型の構造をしており下垂体腺腫が強く疑われた。低アミノ酸血症に対しアミノ酸製剤の点滴静注により壊疽性遊走性紅斑は消失した。リザーバーを留置しADM 10mg+DSM 600mgを週2回連日動注とDTIC 450mg/日を5日間連日静注、4週休薬およびTAM 20mg/日連日内服を開始した。1コース終了時のCTにて多発肝転移の著明な減少、縮小が得られた。空腹時血糖も88と低下した。グルカゴノーマの多発肝転移に対し化学療法が著効した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。