日本消化器内視鏡学会甲信越支部

045 画像診断が困難であった膵腺房細胞癌の1例

新潟県立がんセンター新潟病院 内科
吉澤 和哉、本山 展隆、秋山 修宏、井上 聡、稲吉 潤、新井 太、船越 和博、加藤 俊幸
新潟県立がんセンター新潟病院 外科
土屋 嘉昭
新潟県立がんセンター新潟病院 病理
太田 玉紀

 膵腺房細胞癌は比較的まれな悪性膵外分泌腫瘍で、CTでは比較的境界明瞭な低吸収域として描出されることが多い。今回われわれは、腹部画像検査で病変の指摘が困難であった膵腺房細胞癌の1例を経験したので報告する。 症例は、77歳、男性。主訴は、心窩部痛。同胞に胃癌、乳癌あり。高血圧で近医通院中、心窩部痛が出現したため上部消化管内視鏡検査を受けたが異常なし。腹部超音波検査、CTで膵体尾部の腫大が疑われたため当科を紹介にて受診し、精査目的に入院した。心窩部に圧痛を認めたが、腫瘤は触知しなかった。血液検査では肝胆道系酵素に異常はなく、アミラーゼ325 IU/lと上昇していたが、CEA、CA 19-9、AFP、DUPAN-2は正常であった。腹部超音波検査では、膵体尾部境界付近で主膵管の拡張と考えられる所見を認めたが、膵内に腫瘍性病変を指摘できなかった。膵体部の腹側に10mm前後の結節が複数個認められ、腫大したリンパ節と考えられた。3mmスライスのdynamic CTでも、膵体尾部の主膵管に軽度の拡張を認めたが、拡張膵管の頭側に腫瘍性病変を指摘できなかった。ERCPでは、膵頭体移行部付近で先端がわずかに先細るような主膵管の閉塞を認めた。MRIでは、膵体尾部の主膵管に軽度の拡張を認め、この頭側の膵体部にdynamic MRI動脈優位相、後期相で約2cm大の境界不明瞭な造影効果に乏しい腫瘍を認めた。以上より膵体部の浸潤性膵管癌と診断し、手術を施行した。膵体部に約4cm大の腫瘍を認め、膵体尾部切除術を施行した。病理組織学的に膵腺房細胞癌と診断された。 本例は術前の画像診断で病変を指摘しにくかったが、当院で切除された他の膵腺房細胞癌の画像所見をあわせて報告する予定である。