日本消化器内視鏡学会甲信越支部

042 膵石嵌頓にて膵炎発作をきたし、自然排石をCTにて観察しえたPancreas divisum症例

飯山赤十字病院 内科
大久保 健太郎、丸山 雅史、長屋 匡信、富田 俊明、上條 浩司、小林 信彦、望月 太郎、古川 賢一
飯山赤十字病院 外科
横井 謙太、柴田 均、中村 学、石坂 克彦、川村 信之

 症例24歳、男性。飲酒は機会飲酒程度。焼肉を夕食として摂取したのちに、心窩部痛が出現し、当院救急外来を受診した。血液検査で膵酵素の上昇を認め、急性膵炎と診断され入院した。腹部CTでは膵全体のびまん性の腫大を認め、膵下面にFluid collectionを認めた。膵頭部には結石像を認めた。膵炎に対し、タンパク分解酵素阻害剤や抗生剤などの投与を行った。第8病日ごろから急激に腹部症状が改善し、腹部CTにて膵頭部に存在していた結石が、上行結腸に移動したのを確認した。そして便中より結石を回収し、膵石であることが判明した。またERCPおよびMRCPによってpancreas divisumと診断した。膵石の除去には一般的に体外衝撃波破砕や内視鏡的採石が行われ自然排石は極めて珍しく、現在までに膵石自然排石の経過観察報告例は無い。本例ではpancreas divisum特有の解剖学的構造から、背側膵管内の膵液の圧力が嵌頓した結石のみに働いたために、自然排石したものと考えた。急性膵炎は約10〜30%が特発性と報告されているが、その中にこのようなpancreas divisumに伴う膵石に起因する膵炎の自然排石例があるのかもしれない。