日本消化器内視鏡学会甲信越支部

039 三重複癌に対し化学療法が有効であった1例

山梨大学 医学部 第1内科
浅野 伸将、植竹 智義、進藤 浩子、斉藤 晴久、坂本 穣、大塚 博之、中村 俊也、岡田 俊一、佐藤 公、榎本 信幸

 症例は75歳男性。2000年近医にてC型慢性肝炎を診断、その後当科を紹介受診した。2005年2月肝S2に17mmの腫瘍を指摘、同時に右頚部リンパ節の腫大を認めた。6月6日CT上で肺S6にも径33mmの腫瘍を認め、精査加療目的にて6月20日入院となった。入院後のCT、MRI、Gaシンチ、PETの画像検査および上下部内視鏡検査より肝細胞癌、大腸回盲部腫瘍、肺癌の三重複癌および頚胸部リンパ節腫瘍が確認された。さらに各々の病理組織学的検査は、肝癌は索状構造を認める原発性高分化癌、大腸癌は原発性未分化腺癌、肺癌は肺胞組織を伴う原発性高分化腺癌と診断。また頸部リンパ節腫瘍は大腸に類似した未分化腺癌であった。以上より原発の異なる三重複癌と診断し、7月1日HCCに対しTAEを施行、8月16日より化学療法FOLFIRI(5-FU2日間持続静注+LVにCPT-11併用)を開始した。骨髄抑制や薬疹の副作用を認めたが現時点で2クール終了、その治療効果は腫瘍縮小効果および腫瘍マーカー値の改善より奏功していると考えられ、今後も治療を継続する予定である。今回、三重複癌に対し化学療法が奏功している貴重な症例を経験したので、文献的考察も合わせて報告する。