日本消化器内視鏡学会甲信越支部

038 肝アミロイドーシスに伴う難治性腹痛に対し腹腔神経叢ブロックが著効した1例

立川綜合病院 消化器内科
森田 慎一、杉谷 想一、原 弥子、野中 雅也、藤原 真一、堀 高史郎、小林 由夏、飯利 孝雄
立川綜合病院 麻酔科
高木 俊一、高橋 久人、前 知子

 【症例】51歳。女性。主訴:腹痛、嘔気。現病歴及び経過:H15.11月頃より腹痛、嘔気出現。腹部CT上著明な肝腫大を認めた。精査加療目的にH16.11月に当院入院。原発性アミロイドーシスと診断され、臓器腫大に伴う腹膜、肝皮膜の過伸展による腹痛と考えてペンタゾシン内服を開始した。根治的治療のため他院へ転院しVAD療法を2コース施行するも効果は少なく、対症療法を目的にH17.3月当院再入院となった。入院後腹痛は増強しモルヒネの内服を開始した。その後モルヒネを増量するも間欠的な腹痛は続き、副作用としての傾眠も強く認められた。H17.6月、更なる疼痛管理目的にTh8/9間より硬膜外カテーテルを挿入し硬膜外腔への局所麻酔薬投与を開始した。疼痛は軽減したものの残存しモルヒネの中止には至らなかった。またカテーテル刺入部に感染症状を認めたため抜去しモルヒネの持続静注を開始した。8月、根治的な徐痛目的に後方接近法にて腹腔神経叢ブロックを施行。合併症は無く麻薬の減量に伴う退薬現象を数日認めた他は特に問題なく麻薬を中止することができた。現在腹痛は無くリハビリ中であり、近日中に退院の予定である。【考察】腹腔神経叢ブロックは腹腔臓器に由来する疼痛を寛解させることを目的として、腹腔神経節に入る神経や神経節に局所麻酔薬や神経破壊薬を注入する方法であり、悪性腫瘍や慢性膵炎などに伴う上腹部痛、背部痛に対し適応がある。今回我々は肝腫大に伴う肝皮膜の伸展が原因と考えられた難治性の腹痛に対して腹腔神経叢ブロックを施行した。合併症無く効果的な徐痛を得ることができ、また麻薬の副作用も消失する事でADLの向上が得られた。腹腔神経叢ブロックは手技的にも困難ではなく重篤な合併症も少ないため、腹部臓器由来の難治性疼痛に対しQOLを改善することのできる非常に効果的な治療であると考えた。