日本消化器内視鏡学会甲信越支部

034 硬化性胆菅炎の一例

新潟県立がんセンター新潟病院外科
砂川 宏樹、土屋 嘉昭、野村 達也、中川 悟、薮崎 裕、瀧井 康公、梨本 篤、田中 乙雄
同内科
船越 和博
同病理
太田 玉紀

 症例は51才の男性。2004年3月9日上腹部痛を主訴に近医受診。腹部超音波、CTにて膵菅胆菅の拡張と血清アミラーゼの上昇を認め、急性膵炎の診断で治療施行。その後も膵菅の拡張と膵頭部の腫大あり、膵癌の疑いにて当院内科紹介受診。検査施行するも膵癌の所見なく外来経過観察となる。その後の経過中、下部胆管の狭窄と黄疸も出現。ENBDにて減黄後、下部胆菅癌の疑いで2005年1月5日当科外来紹介受診。CTでは膵臓に明らかな腫瘍性病変認めず。膵菅の拡張と肝内胆菅の拡張を認めた。ERCPやMRCPでは下部胆管の狭小化と膵頭部から膵体部近位の膵菅の狭小化を認めた。下部胆菅癌の診断のもとで2005年1月17日幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した。切除標本では中部下部胆菅に結節様の病変を伴う壁肥厚を認めた。病理組織学的検査では慢性膵炎と硬化性胆管炎であった。自己抗体検査では抗核抗体・抗平滑筋抗体・抗好中球細胞質抗体・Ig Gは正常値であった。硬化性胆菅炎は種々の原因によって胆管上皮細胞直下の胆菅周囲に起こる慢性炎症性線維化で特徴づけられ、原発性と続発性に分類される。今回報告した症例は続発性によるものだと考慮され、その原因としては一般的に結石症や手術・外傷また最近では自己免疫性膵炎に合併した硬化性胆菅炎等が問題となっている。今回、慢性膵炎に合併した硬化性胆菅炎を経験したので報告する。