日本消化器内視鏡学会甲信越支部

033 経皮経肝的門脈側副血行路塞栓術(PTO)併用バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)が胃静脈瘤硬化療法に有効であった1例

山梨大学 医学部 第1内科
進藤 浩子、植竹 智義、斉藤 晴久、中村 俊也、佐藤 公、榎本 信幸
山梨大学 医学部 放射線科
荒木 拓次、荒木 力

 症例は69歳女性。2004年11月より近医で自己免疫性肝炎疑いを経過観察されていた。2005年4月吐血し、緊急内視鏡を施行され胃静脈瘤からの出血と診断された。その後B-RTOを試みるも右大腿静脈穿刺困難のため施行できず。当科転科後、再度試みるも胃静脈瘤から食道静脈瘤への流出路の閉塞が困難なため、外来経過観察とした。同年7月5日に再吐血し、白色血栓を認める胃静脈瘤に対しヒストアクリル局注止血後、入院となった。前回の血管造影結果を踏まえ、経門脈的アプローチより食道静脈瘤への流出路も閉塞するB-RTOを予定した。PTOでは左胃静脈から食道静脈瘤へ抜ける経路と胃静脈瘤へ供血する経路が分岐していることを確認した。その後、胃静脈瘤への供給路を選択しPTO用カテーテルを留置した。 次に右大腿静脈よりB-RTO用カテーテルを左副腎静脈へ挿入。バルーン閉塞下での左副腎静脈造影にて胃静脈瘤が造影されることを確認し、両側のバルーン閉塞下に左副腎静脈から逆行性に5%オルダミン溶液を計16ml注入。左胃静脈のカテーテルを抜去後、シース内からスポンゼル細片を肝実質内の穿刺経路に留置止血し、 副腎静脈のバルーンは翌日抜去した。治療1週間後のCT、超音波内視鏡にて胃静脈瘤の血栓化が確認され退院となった。B-RTO施行困難な血行動態の症例に対し、PTOの併用が効果的であった貴重な症例を経験したので考察を含め報告する。