日本消化器内視鏡学会甲信越支部

030 上腸間膜静脈・門脈血栓症を伴うIPHと考えられた一例

済生会新潟第二病院 消化器科
上村 博輝、牛木 隆志、冨樫 忠之、渡邉 孝治、関 慶一、石川 達、太田 宏信、吉田 俊明、上村 朝輝
済生会新潟第二病院 外科
武者 信行、坪野 俊広、酒井 靖夫
済生会新潟第二病院 病理検査科
石原 法子
済生会新潟第二病院 放射線科
武田 敬子

 症例は51歳の女性。2004年6月頃より腹部膨満と労作時呼吸困難が出現し7月1日当院入院となった。眼瞼結膜に貧血、眼球結膜に軽度の黄疸、著明な腹水、下腿に浮腫を認めた。Hb 2.8、Plt 4000と著明な貧血と血小板減少、PT、AT-IIIの低下がみられた。腹部CTにて門脈血栓が疑われ、上腸間膜静脈と胃小彎の側副血行と食道静脈瘤の発達を認めた。GTFではRCを伴うF3の食道静脈瘤と胃静脈瘤もみられた。腹部血管造影で上腸間膜静脈および門脈本幹は造影されず、肝内の門脈枝は側副血行路を通して造影され、広範な血栓の存在が示唆された。また短胃静脈を介し著明に発達した胃静脈瘤が認められた。7月8日、Mesocaval shunt(SMV-IVC)+Splenectomyを施行した。術後のGIFで、食道・胃静脈瘤はF1程度と縮小し、肝不全症状の出現もなく、8月6日に退院したが、8月23日に意識障害のため救急搬送。多発性出血性脳梗塞、感染性心内膜炎発症し、9月8日、永眠された。肝組織所見では、一部の門脈域に線維性拡大を認める程度で最末梢門脈枝の狭小化、潰れが認められIPHの可能性が考えられた。本例は、IPHを基本病変にプロテインCの低下も伴って、門脈血栓を形成し、門脈圧が急激に上昇し、食道・胃静脈瘤が著明に発達したものと考えられた。IPHでは門脈血栓の併発とそれによる病態の変化に注意を要するものと考えられた。