日本消化器内視鏡学会甲信越支部

026 発症から自然治癒まで経過観察し得たC型急性肝炎の1例

山梨大学 医学部 第1内科
小松 信俊、坂本 穣、門倉 信、雨宮 史武、板倉 潤、斉藤 晴久、岡田 俊一、榎本 信幸
あいのた内科消化器科クリニック
相野田 隆雄
市立甲府病院
赤羽 賢浩

 症例は53歳、女性。2004年2月に欠神発作のため近医受診、心臓カテーテル検査が施行された。この際の術前検査ではAST 17、ALT 18、anti-HCV(−)であった。結果的には上室性頻拍の診断で、カテーテルアブレーションは行われずアテノロール、塩酸ジルチアゼムによる薬物療法が開始された。自覚症状は乏しかったが、術後12日目にAST 54、ALT 75、ALP 234と肝機能障害が出現し、術後40日目には、T.Bil 1.4、AST 720、ALT 1091、ALP 637と上昇した。このため薬剤性肝障害が疑われ、原因薬剤が中止され、ALTは518まで低下したが、術後55日目にT.Bil 2.6、AST 525、ALT 606、ALP 767と、黄疸と肝機能の悪化を認めた。同時にHCV抗体弱陽性も判明したため当科紹介、入院となった。入院時、T.Bil 2.1、AST 313、ALT 491、ALP 676、anti-IgM-HBc(−)、anti-IgM-HA(−)、anti-EB-VCA IgM(−)、anti-サイトメガロIgM(−)、anti-HCV 15.8(C.O.I.)弱陽性、HCV RNA 41.0 KIU/ml、HCV genotype 1b であり、経過からC型急性肝炎と診断した。安静臥床により、発症約2週間でALTは正常化し、肝生検を行ったが急性肝炎の回復期に矛盾しない所見であった。この後、約4ヶ月間はHCV RNAが陽性であったが、5ヶ月目にはHCV RNAが陰性化し、約1年間HCV RNAは持続陰性化、ALT値は正常化を持続している。急性C型肝炎は6〜7割が慢性化するといわれているが、その経過が詳細に観察されている例は少ない。本例は発症から自然治癒まで詳細に経過観察された貴重な1例として、文献的考察を含め報告する。