日本消化器内視鏡学会甲信越支部

025 スクリーニング内視鏡検査で発見された十二指腸副乳頭部カルチノイドの一例

長野市民病院 消化器科
武田 龍太郎、長谷部 修、立岩 伸之、今井 康晴、長田 敦夫、関 仁誌、保坂 典子

 症例は73歳の女性。自覚症状なし。2005年6月当院人間ドックのスクリーニング内視鏡検査で、十二指腸副乳頭部に15mmの腫瘤を発見された。腫瘤は黄白色調で表面に一部不整血管を伴っていた。生検の結果、腫瘍細胞はchromogranin A陽性であり、カルチノイド腫瘍と診断された。EUSでは2〜3層に主座を有する10×7mm大の低エコー腫瘤であり、3層は一部菲薄化していたが断裂はみられなかった。腹部造影CTでは十二指腸内腔に突出する15mmの多血性腫瘤像を呈しており、周囲組織への浸潤、肝転移、リンパ節腫大はみられなかった。ERCPでは、膵胆管に狭窄や圧排の所見は認められなかったが、Santorini管の描出は不良であった。以上より腫瘍径10mm強のカルチノイド腫瘍と診断し、2005年9月1日に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した。術後病理所見では、腫瘍径10×8mm(固定後)、腫瘍は発達したOddi筋様の筋組織に一部達しており、carcinoid(well differentiated endocrine neoplasm),深達度;Od,ly(+),v(−),n(+);(No.13,No.17)であった。十二指腸副乳頭部カルチノイドの報告は極めて稀であり、文献検索を交え、診断、治療方針につき考察する。