日本消化器内視鏡学会甲信越支部

023 家族性大腸腺腫症(FAP)術後の長期経過中に胃・十二指腸腺腫から癌化した1例

新潟県立がんセンター新潟病院 内科
井上 聡、加藤 俊幸、船越 和博、新井 太、本山 展隆、秋山 修宏、稲吉 潤

 症例58歳,男性。1973年に家族性大腸腺腫症(FAP)と診断され結腸切除術を受け、直腸腺腫の経肛門的切除を繰り返したのち1991年に直腸癌(pm,N(+))でMiles'手術、回腸に人工肛門を造設された。1986年からは胃十二指腸に多発する腺腫の定期的観察が行い、1993年にはIIa型早期胃癌で胃亜全摘を受けた。  その後も、胃と十二指腸に多発する腺腫に対する定期検査が続けられ、2002年には残胃に多発するIIa型早期癌のEMRを、さらに十二指腸の隆起型早期癌のEMRを受けた。2003年から十二指腸の隆起性病変を大きいものからEMRを定期的に繰り返し、7〜35mm大の摘出した14病変のうち12病変は高分化型腺癌と診断されている。主な隆起性病変はEMRすることができたが、現在も残胃と十二指腸残存する多発病変も生検で悪性と診断されているため、開腹手術を含めた今後の治療に苦慮している。検査成績は、CEA 2.7ng/ml,TPA 21U/L,CA72-4 <3.0U/ml,p53抗体(-)である。  家族性大腸腺腫症(FAP)に胃や十二指腸のポリープや腺腫を合併することが知られ、胃や十二指腸乳頭部における癌化が報告されている。本例ではFAPと直腸癌の術後、胃・十二指腸に多発する腺腫の20年間の長期観察が行われ、胃と十二指腸における癌化が著明である。