日本消化器内視鏡学会甲信越支部

022 上部消化管出血にて診断された十二指腸GISTの一例

新潟県立吉田病院 内科
坪井 清孝、中村 厚夫、八木 一芳、関根 厚雄
新潟県立吉田病院 外科
田宮 洋一

 症例は、77歳、女性。2005年6月12日、一過性の意識レベル低下にて当院に救急搬送され、黒色便、血液検査では貧血(Hb 7.1g/dl)が確認された。上部消化管内視鏡検査を施行し、腫大した十二指腸乳頭からの出血と判断し、胆道出血疑いにて入院した。腹部超音波検査で、右上腹部に3×2cm大の低エコー腫瘤を認め、カラードップラーで血流豊富であることが確認された。腹部CTでは、膵頭部に接して直径3cm大の造影効果のある孤立性腫瘤を認め、十二指腸腫瘍が疑われた。側視鏡による上部消化管内視鏡検査では、十二指腸下行脚、乳頭部の対側に直径3cm大の表面平滑な粘膜下腫瘍を認めた。初回内視鏡検査施行時に、出血していた腫瘍頂部に粘膜欠損部を認めたため、同部位を予防的にクリッピングしたが、再出血を来たしHSEを追加して止血した。腹部血管造影検査では、腹部CTの腫瘤に一致する部位に、前上膵十二指腸動脈を栄養血管とする腫瘍濃染像と、同部より肝門部へのdrainage veinを認めた。同時に脾臓、腹腔、肝臓に多発性濃染像を認め転移が疑われた。retrospectiveにCTを見なおすと、造影早期相で脾臓、肝臓に腫瘍影が認められた。レゾビストMRでは、肝転移の所見は得られなかった。血液検査の腫瘍マーカーは、CEA、CA19-9、AFP、PIVKA-II、エラスターゼ1、DUPAN-2全て陰性であった。以上より、十二指腸間葉系腫瘍の肝臓、脾臓、腹腔転移と診断し、再出血予防と診断確定を目的に、同年7月15日十二指腸部分切除術を施行した。腫瘍は、最大径3.5cm、割面は白色調で腫瘍頂部に深掘れ潰瘍を伴っていた。病理組織学検査では、核分裂像は0-2/50HPF、免疫組織化学的染色は、c-kit陽性、CD34陽性、S-100陽性、desmin陰性、α-SMA陰性であり十二指腸GISTと診断した。肝臓、脾臓、腹腔の転移が疑われる腫瘤について、チロシンキナーゼ阻害剤による治療は現在検討中である。