上部消化管は小腸大腸に比べCrohn病の病変出現の頻度は少ない。我々は上部消化管内視鏡検査(以下GIF)を契機に確定診断されたCrohn病を経験したので報告する。 【症例1】55歳女性。主訴:心窩部痛。既往歴:痔瘻。現病歴:2003年1月胃穿孔で当院の外科に入院、緊急手術となった。退院後経過観察中3月のGIFで下部食道、胃前庭部に浮腫の乏しい打ち抜き様の潰瘍を認めた。炎症性腸疾患による上部消化管病変が疑われ、下部消化管内視鏡検査(以下CF)を実施、盲腸に敷石状所見、回盲部に多発潰瘍を認めた。同部の生検より類上皮性肉芽腫を認めCrohn病と診断された。 【症例2】62歳女性。主訴:上腹部不快感。既往歴:右膝関節炎。現病歴:2003年4月より上腹部不快感にて近医を受診、同院でのGIFにて体上部に多発瘢痕を認め精査目的に7月当院紹介。GIF再検にて胃体部大弯の皺襞に竹節様の所見、胃弓隆部に敷石状所見、十二指腸球部に縦走潰瘍瘢痕を中心に多発潰瘍を認めた。Crohn病が疑われたものの、CF、小腸造影を実施したが所見を認めずGIFの生検によりCrohn病の診断にいたった。 【症例3】22歳男性。主訴:腹痛・下痢・体重減少。現病歴:2004年10月頃より夜間短時間で消退する腹痛を自覚、1日3行程度の軟便も持続し、3ヶ月で5Kgの体重減少も出現した。2005年1月腹痛下痢が増悪し、3月当院受診、GIFを実施した。胃体部大弯に竹節様の所見を認めた。小腸造影では回腸末端の縦走潰瘍、敷石様所見を認め、CFの生検で類上皮性肉芽腫を認めCrohn病と診断した。 以上の3例につき診断の契機なった特徴的なGIF所見を中心に供覧する。