日本消化器内視鏡学会甲信越支部

020 H.pylori除菌後4年10ヵ月後に肉芽腫の消失を見た肉芽腫性胃炎(granulomatous gastritis)の1例

下越病院 内科
河内 邦裕、渡辺 敏、畠山 眞、山川 良一

 症例は52歳、男性。平成11年10月1日の健診の胃内視鏡検査にて胃角部に潰瘍と胃体部にヒダ集中を伴う瘢痕を指摘されH2ブロッカーを投与された。平成12年2月21日の胃内視鏡検査では胃角部に潰瘍および、胃体部から胃底部にヒダ集中と中央に浅い陥凹をもつ10mm前後の丈の低い結節状隆起が散在していた。隆起部からの生検にて乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫を認めた。しかし眼病変、肺病変をはじめとしてサルコイドーシスを疑わせる所見は認めなかった。胃粘膜生検培養でH.pylori 陽性であった。その後H2ブロッカーの投与にて開放性潰瘍は消失したが、多発する結節状隆起は同様であった。平成12年11月ランソプラゾール、アモキシシリン、クラリスロマイシンによる除菌治療を施行し除菌に成功した。除菌1ヶ月後、8ヵ月後、1年9ヶ月後の内視鏡検査では多発する結節状隆起を認め生検でも肉芽腫を認めた。しかし、3年7ヶ月後の内視鏡検査では結節状隆起は不明瞭となり、さらに、4年10ヵ月後の内視鏡検査では結節状隆起は平坦化し生検にて肉芽腫は認めなかった。 肉芽腫性胃炎に対して除菌療法を施行した症例の報告はまだ少ない。また、除菌後3ヵ月後には肉芽腫が消失したという報告がある一方で3年後も肉芽腫が残存していたとの報告もある。本症例は除菌後1年9ヶ月後には結節状隆起を認め肉芽腫は残存していたが4年10ヶ月後には隆起は平坦化し肉芽腫は消失していた。