日本消化器内視鏡学会甲信越支部

019 興味ある内視鏡像を示し原因不明の肥厚性瘢痕と診断した胃病変の1例

山梨県立中央病院 消化器内科
小倉 拓、小嶋 裕一郎、松井 啓、古谷 英人、鈴木 洋司、廣瀬 雄一、望月 仁、高相 和彦
山梨県立中央病院 病理
小山 敏雄
山梨県立中央病院 外科
渡邊 光章、芦澤 一喜

 症例は45歳女性、家族歴および既往歴に特記事項なし。検診で実施した上部消化管造影検査で胃穹窿部に異常を指摘され、2004年7月に近医で上部消化管内視鏡検査を実施した。穹窿部に隆起性病変を認めたため、同年8月当院紹介となった。身体所見、検査所見に異常所見を認めなかった。上部消化管造影検査では、穹窿部に襞壁集中を伴う大きさ2cmの隆起性病変として描出され、隆起の表面は平滑であった。上部消化管内視鏡検査では、襞壁集中を伴うやや発赤調の隆起性病変で、近接観察ではアレアの強調像が認められた。生検では著変のない胃体腺粘膜の像であった。超音波内視鏡検査では、第II層以深の均一な低エコー像を呈していた。 患者家族の希望および確定診断目的で外科的に同部の局所切除を実施した。組織学的には病変は2 x1.3cmで粘膜下層を主体に軽度の細胞浸潤を伴う瘢痕様病変で膠原線維は束状であった。肥厚した部分の漿膜下層にも同様の像を認めたが、固有筋層の同所見はやや乏しかった。線維化の原因ははっきりしなかった。以上興味ある内視鏡像を示し、組織学的に原因不明の肥厚を伴う瘢痕様病変を経験にしたので、文献的考察を加えて報告する。