日本消化器内視鏡学会甲信越支部

017 初回手術から7年の間に2度の腹壁再発に対して切除を行った進行胃癌の1例

独立行政法人国立病院機構 松本病院 外科
北沢 将人、小池 祥一郎、加藤 響子、小松 沙織、前野 一真、中村 俊幸、岩浅 武彦
独立行政法人国立病院機構 松本病院 研究検査科病理
中澤 功

 症例は80歳の女性.1997年12月(73歳時)貧血を機に,進行胃癌と診断され胃全摘を行った.多発癌であり,病理は(1)muc, MA, post, Type IV 100x90mm, se, ly2, v0, N2(+),(2)por MA Ant IIc 18x30mm, sm, ly0, v0 StageIIIBであった.術後CDDP10mg+5FU 500mg 5日間の化学療法を行った.1998年5月輸入脚症候群にて緊急手術をおこなったが,腹腔内に再発兆候を認めなかった.2001年1月より腫瘍マーカーが上昇し,同年9月左腹直筋内に2cm大の腫瘤を認め、腹壁再発と診断した.同年10月腹壁腫瘍切除を行い,腹壁欠損部は直接閉鎖した.腹腔内に腹膜播種無く,再発兆候認めなかった.病理はmucinous adenocarcinoma,初回手術の(1)の病理像と同じであった.術後CDDP10mg+5FU 500mg 5日間の化学療法を追加した.その後腫瘍マーカーは正常化するも再上昇し,2002年3月に右肺腫瘍を指摘され,肺転移疑いにて右肺下葉部分切除を行ったが,病理で肺梗塞と診断された.以後外来にて経過観察していたが,2005年6月右腹直筋内に腹壁腫瘤を指摘され、腹壁再々発と診断した.総胆管結石も認めたため,腹壁腫瘤切除,胆嚢摘出+総胆管切開+Tチューブドレナージを行った.腹腔内には多数の腹膜播種を認めた.現在はTS−1内服にて外来通院中である.初回手術より4年後,7年後に2回の腹壁再発をし,切除を行った進行胃癌症例を経験した.胃癌の腹壁再発は通常播種のことが多く,切除対象となることは稀である.本例では他に明らかな再発を疑う所見は無く,2回とも切除を行った.最終開腹所見では腹腔内に再発を認めたが,経過から緩徐な進行の胃癌と考えられた.