日本消化器内視鏡学会甲信越支部

015 腹壁浸潤によるびまん性硬化を主訴とし、weekly low-dose paclitaxel療法が有効であった胃癌の1例

新潟市民病院 消化器科、新潟市民病院 外科
和栗 暢生、古川 浩一、滝沢 一休、池田 晴夫、岩本 靖彦、相場 恒男、米山 靖、五十嵐 健太郎、月岡 恵、桑原 史郎

 症例は62歳、男性。2004年11月より陰嚢、陰茎部の腫脹を認め、12月末に当院外科、2005年1月初旬には当院内科、泌尿器科を受診した。CTにて陰嚢水腫と恥骨前腹壁の腫脹を認めたが、全身状態良好で経過観察となった。2月中旬には下腹部の膨満感が出現し、当院外科再受診。CT再検で右水腎症、腹壁の肥厚を指摘され、原因検索のため3月1日総合診療科に入院した。上部消化管内視鏡検査で胃体中部後壁から大弯にかけて3'型の胃癌を認め、生検ではgroup V (sig)であった。CT上リンパ節転移は明らかでなく、腹水もみられなかったが、直腸診でSchnitzler陽性であったこと、水腎症から後腹膜線維症が疑われることから、腹壁の肥厚硬化は胃癌の腹壁浸潤と考えられ、3月8日消化器科に転科となった。腹壁生検では著明な線維化した中に低分化腺癌を認め、診断が確定された。Paclitaxel 90mg/bodyを週1回投与、3週投与1週休薬で1コース)を開始した。1コース終了時には水腎症が改善し、腹壁が軟化して食事が全量摂取可能となった。外来で継続し、原発巣こそ著明な改善は認めていないものの進行はなく、腹壁の肥厚はその後も改善し、6コース終了時にはCT上も腹壁は正常となり、現在も無症状で継続加療中である。腹壁浸潤による硬化を主訴とし、weekly low-dose paclitaxel療法が有効であった稀な胃癌症例と考え報告する。