日本消化器内視鏡学会甲信越支部

014 放射線治療にて完全寛解後2年目にWaldeyerリンパ節に遠隔再発を認めた胃MALTリンパ腫の1例

信州大学 医学部 消化器内科
松田 賢介、赤松 泰次、金子 靖典、小松 通治、須澤 兼一、北原 桂、白川 晴章、井上 勝朗、横澤 秀一、新倉 則和、越知 泰英、清澤 研道

 症例は75歳の女性。平成12年9月検診で上部消化管内視鏡検査(EGD)を受け、胃体部大彎にびらんを認めた。同部位の生検でMALTリンパ腫と診断された。鏡検では Helicobacter pylori(HP)感染を認めなかったが、血清HP抗体が14.0U/mlと判定保留域であったためHP除菌療法を施行された。その後治療効果なく経過観察されていた。平成13年9月のEGDで病変の拡大を認めたため、同年10月当科を紹介された。内視鏡所見では胃体部大彎の陥凹性病変と穹隆部大彎に褪色調変化を認め、いずれの部位からも生検で異型リンパ球の浸潤がみられ、免疫組織染色とあわせて胃MALTリンパ腫と診断した。各種画像検査、骨髄穿刺よりstageIと診断し、HP感染を認めないことから放射線療法を行った。治療直後及び3ヵ月後の内視鏡所見、生検所見ではともに完全寛解の状態であった。その後定期的に経過観察していたが、特に再発は認めなかった。平成16年5月に微熱、体重減少が出現した。血液検査で可溶性IL-2レセプターの上昇がみられたため全身検索を行った。局所再発はなかったがGaシンチおよびCTでWaldeyerリンパ節及び両側上内深頚領域リンパ節の腫脹を認め、遠隔再発と診断した。高齢のため少量のcyclophosphamide単独による化学療法を開始し現在も治療を継続して経過観察を行っている。HP除菌療法抵抗性胃MALTリンパ腫に対する放射線療法は有効な治療法であるが、完全寛解後に遠隔再発を来たす症例があり、長期にわたる注意深い経過観察が必要であると考えられた。