日本消化器内視鏡学会甲信越支部

012 広汎な腹膜播種を伴った胃悪性GISTの1例

国立病院機構松本病院 外科
小松 沙織、小池 祥一郎、永春 幸子、加藤 響子、北沢 将人、前野 一真、中村 俊幸、岩浅 武彦
国立病院機構松本病院 内科
古田 清、宮林 秀晴、松林 潔
国立病院機構松本病院 研究検査科病理
中澤 功

 広汎な腹膜播種を伴った胃悪性GISTの1例国立病院機構松本病院外科1)、同内科2)、同研究検査科病理3)小松沙織、小池祥一郎、永春幸子、加藤響子、北沢将人、前野一真、中村俊幸、岩浅武彦1)、古田 清、宮林秀晴、松林 潔2)、中澤 功3)【はじめに】吐血で発症し、手術時に広汎に腹膜播種を認めた胃悪性GISTの1例を経験したので報告する。【症例】症例は80歳男性。主訴は吐血。2005年2月吐血あり近医受診。Hb 7.0と貧血を認めため、上部消化管内視鏡検査施行。胃体上部に3型胃癌を疑われ、精査加療目的に当院紹介。再検上部消化管内視鏡検査で胃体上部に深い潰瘍を有する粘膜下腫瘍を認め、超音波内視鏡検査では第4層由来の腫瘍であり、潰瘍底からの生検でGISTと診断された。上部消化管造影検査では胃体上部から下部大彎に中央に陥凹を伴う小児頭大の腫瘤を認めた。GISTの診断にて手術施行。開腹すると腫瘍は既に自壊し、大網、横隔膜、腸間膜に無数の播種を認めた。一部肝左葉に直接浸潤あり、肝部分切除を加えて胃全摘を行った。病理組織診断はGIST, 10x10cm, 紡錘形細胞が錯綜し、mitosisが目立つ。大網、腹膜に多数の播種があり、CD117(c-kit)陽性、CD34陽性、Vimentin弱陽性、S-100陰性、SMA陰性、MIBI labeling indexは13.2%であった。術後インフルエンザに罹患したが軽快し、術後第40病日よりメチル酸イマチニブ400mg/日を開始した。副作用として嘔気、低K血症を認めため内服開始後18日目より300mg/日に減量した。しかし副作用の改善なく、内服開始後40日目より一旦休薬としている。内服開始後1ヶ月の腹部CTでは残存した横隔膜の播種は明らかに縮小していた。現在減量し服薬を再開しており、経過観察中である。【結語】腹膜播種を伴った胃悪性GISTの1例を経験した。悪性度が高く、分子標的治療薬の継続投与が望ましいが、副作用により基準量での治療が困難であった。副作用情報によると低K血症の頻度は1.4%であった。