日本消化器内視鏡学会甲信越支部

010 噴門側胃切除後の残胃癌5例の検討

新潟県立がんセンター新潟病院 外科
山口 健太郎、中川 悟、藪崎 裕、土屋 嘉昭、瀧井 康公、梨本 篤、田中 乙雄

 【はじめに】上部早期胃癌に対し積極的に噴門側胃切除,空腸間置による再建を行ってきた.特に1996年以降は空腸嚢間置 (Jejunal pouch interposition: JPI) による再建を標準術式として採用している(現在まで噴門側胃切除170例,うちJPIによる再建92例).しかし噴門側胃切除後の残胃は胃癌発生好発部位であるという問題点も存在しうる.今回われわれは噴門側胃切除後の経過観察中,残胃に発生した早期癌4例,進行癌1例を経験したので報告する.【症例】残胃癌5例中4例はJPIによる再建が施行されており,術後ほぼ定期的に内視鏡検査により経過観察され,いずれも早期癌の状態で発見された.初回手術から残胃癌が発見されるまでの期間はそれぞれ1, 2, 9, 10年であった.このうち3例は内視鏡的粘膜切除(EMR)による治療が可能であったが,1例は残胃後壁に存在する広範な0-IIa病変のため,開腹し直視下に外科的粘膜下層切除術を施行した.残る1例は空腸間置術後,年1回の上部消化管造影検査にて経過観察されていたが,他院への紹介をきっかけにその後検査されず,初回手術から18年経過後,食欲低下の症状にて精査した結果,残胃空腸吻合部付近に高度進行癌の状態で発見され手術不能であった.【まとめ】上部早期胃癌に対する噴門側胃切除,JPIによる再建は術後の内視鏡検査も容易に行うことができ,有用な術式である.しかし残胃癌を5例経験し,術後10年以上経過しても定期的なフォローアップをすることが重要であると考える.