日本消化器内視鏡学会甲信越支部

008 Narrow band imaging(NBI)拡大内視鏡による側方進展範囲診断が有用であった胃分化型早期胃癌の1例

佐久総合病院 胃腸科
高橋 亜紀子、小山 恒男、宮田 佳典、友利 彰寿、堀田 欣一、森田 周子、田中 雅樹、古立 真一

 【はじめに】日常診療において、通常観察や色素観察では側方進展範囲の判断が困難な早期胃癌病変に、しばしば遭遇する。NBIは光を狭帯域化することで粘膜浅層での血管や腺構造を強調させることが可能である。今回、NBI拡大内視鏡が側方進展範囲診断に有用であった早期胃癌を経験したため報告する。 【症例】80歳代、女性。近医にて施行された上部消化管内視鏡検査(EGD)で前庭部前壁に径約30mm大の顆粒状粘膜を認め、adenocarcinoma, 0-llaと診断された。当院でのEGDにて、前庭部前壁を中心に褪色調扁平隆起の集簇を広範囲に認めたが、通常及び色素観察では、正常部との境界を同定することは困難であった。NBI通常観察でも境界不明瞭であったがNBI拡大観察では不規則な粘膜微細構造と異常毛細血管をより鮮明に観察することが可能であり、主にvilli patternの差により腫瘍境界を判断し得た。adenocarcinoma, 0-lla+llb, 80mmと診断し、NBI拡大観察下で腫瘍境界にマーキングを施行後、ESDにて一括切除を行った。  新鮮切除標本では、平坦隆起の集簇を認めるが境界不明瞭であった。固定切除標本でも同様に境界不明瞭であった。ピオクタニン染色切除標本では不整で密なvilli様の表面構造を認めるが、境界の認識は困難であった。病理組織像では腺窩上皮に類似した腫瘍上皮が進展し、境界部分では異型腺管の間に正常腺管が介在しており側方進展範囲診断に苦慮した原因と考えられた。病理組織学的進展範囲とNBI拡大観察で診断した進展範囲はほぼ一致しており、最終診断は、adenocarcinoma, 0-lla+llb, 73×46mm in 105×71mm, tub1・tub2>pap, T1(M), ly0, v0, LM(-), VM(-), CurEAであった。 【結論】NBI拡大内視鏡は、境界不明瞭な病変の側方進展範囲診断に有用であった。