日本消化器内視鏡学会甲信越支部

004 術前診断が困難であった食道小細胞癌の1例

山梨大学 医学部 第一外科
中村 淳、赤池 英憲、須貝 英光、河野 浩二、藤井 秀樹
山梨大学 医学部 第一内科
中村 俊也、榎本 信幸

 症例は60歳男性。平成17年1月中旬、胸背部痛出現。症状改善しないため、2月近医受診。CT上、食道壁の肥厚と噴門部リンパ節の腫大を認め食道癌が疑われた。上部消化管内視鏡検査を施行したところ、切歯より30〜38cmの胸部下部食道に深い潰瘍を有する2型病変が認められた。生検の結果、squamous cell carcinoma(S.C.C.)と診断され、当院第一内科へ紹介入院。全身精査の後、手術目的にて当科転科となった。平成17年5月17日、右開胸開腹胸部食道全摘、2領域リンパ節郭清、胸腔内胃管再建術を施行した。術後の病理組織学的検査所見にて免疫染色で抗NSEと抗シナプトフィジンが陽性でありUndifferentiated carcinoma,small cell typeと診断された。また、この病変には通常のS.C.C.の部位も存在しており、small cell carcinomaとS.C.C.が混在した腫瘍であった。 食道小細胞癌は比較的稀な組織型であり、極めて進行が早く予後不良である。食道小細胞癌の術前診断は生検以外で確定することは不可能であり、S.C.C.が混在する症例では、術前の生検部位によっては本症例のようにS.C.C.と診断されsmall cell carcinomaと診断がつかないこともしばしばある。今回我々は、術前に診断が困難であった食道小細胞癌の1例を経験したので、若干の文献的考察を加え報告する。