日本消化器内視鏡学会甲信越支部

003 胸腔鏡補助下にて切除し得た食道GISTの一例

諏訪赤十字病院 外科
柴 將人、島田 宏、澤 枝里、西山 和孝、五味 邦之、矢澤 和虎、梶川 昌二、大橋 昌彦、代田 廣志
諏訪赤十字病院 内科
進士 明宏、武川 建二
諏訪赤十字病院 病理部
中村 智次

 【症例】55歳、男性【主訴】特になし【既往歴】30歳頃:内痔核にて手術、45歳:肺結核、53歳:十二指腸潰瘍、55歳:高血圧【生活歴】喫煙:10本/日(25歳〜45歳、20年間)、アルコール:日本酒2合/日(35年間)【現病歴】平成17年6月3日当院健診にてGIF施行され、食道切歯より25cmの位置に3cm大の粘膜下腫瘍を認めた。自覚症状はなかったが、精査を勧められたことより、信州大学医学部附属病院を受診。針生検施行されるも組織型不明であったことから、手術目的にて7月11日当院外来を紹介受診し、26日入院となった。【入院前検査】腫瘍マーカーはCEA 1.3ng/ml、CA19-9 12U/ml、SCC 0.7ng/mlであり、異常は認められなかった。血算・生化学上特記すべき異常は認められなかった。EUS上は大動脈対側に第4層由来と思われる31×12mm大のhypoechoicな腫瘤を認めた。内部エコーは比較的homogenousであった。胸部CTにおいては大動脈弓下縁レベルに径25mm大の均一な淡く造影される腫瘤として描出された。リンパ節腫大は認めなかった。【手術】7月29日食道粘膜下腫瘍に対してVATS食道腫瘍切除術を施行した。【摘出標本】32×20×20mm大の弾性硬の腫瘍であり、薄いfibrous capsuleに覆われていた。【病理検査所見】組織学的にはよく分化したsmooth muscle cellsの束状〜錯綜増殖からなり、その間には細血管が比較的豊富であった。一部に局所的な線維化を示す部分があるが、壊死巣はみられず、atypicalな所見やmitosisも乏しかった。免疫染色ではs.m.actin及びdesminが陽性であり、さらにCD117(c-kit)及びCD34も部分的に陽性であったことから、GISTと診断された。【術後経過】特に問題なく術後第19病日に退院となった。【考察】食道発生のGISTは稀で、全GISTの5%程度とされる。食道GISTに対する治療の基本は外科的切除であり、系統的リンパ節郭清は原則として必要としない。GISTは新しい概念であるため、食道発生に関する論文が少なく、本例の予後については不明確である。