日本消化器内視鏡学会甲信越支部

37, 乳癌加療中に皮下結節性脂肪壊死症を契機に発見された膵腫瘍の1例

諏訪赤十字病院 消化器科
原 浩樹,武川建二,向出光博,進士明宏,沖山 洋,山村伸吉
同 外科
梶川昌二

 症例は54歳女性.1991年右乳癌に対し乳房切除術を施行.2002年多発肺・骨転移を認め,化学療法を施行中であった.2004年1月頃から,両下腿に硬結を伴う紅斑が出現し,同部からの組織診にて皮下結節性脂肪壊死症と診断された.皮下結節性脂肪壊死症は比較的稀に膵疾患に合併して発症するとされるため,腹部精査を施行したところ,径約5cmの膵頭部腫瘍を認めた.腫瘍は,腹部CTにて造影効果を認め,ERCPにて膵管・胆管の狭窄像を呈し,腹部血管造影検査では上腸間膜静脈の完全閉塞を認めた.以上より膵頭部癌と診断し,2004年4月16日幽門輪温存膵頭十二指腸切除術及び門脈合併切除術を行った.腫瘍径は5×4.5×4cmで,病理学的には乳癌の膵転移であった.
 皮下結節性脂肪壊死症は日常臨床で遭遇する機会は少ないが,潜在する膵疾患を発見するきっかけとなりうる.若干の文献的考察を加えて報告する.