日本消化器内視鏡学会甲信越支部

32,診断に苦慮したS状結腸炎症性腫瘤の1例

長野県立木曽病院 内科
高山真理、吉岡美香、飯島章博
同 外科
北沢真人、北原弘恵、久米田茂喜
信州大学 病理学教室
下条久志

 75歳男性。脳梗塞、心房細動のため脳外科通院中、便潜血陽性のため2004年10月8日大腸内視鏡検査を施行した。S状結腸にφ10mm、基部は粘膜下腫瘍様、中央は強い発赤調の陥凹を伴う腫瘤を認めた。抗凝固剤中止後10月19日生検を行った。サイズ変化は認めなかった。病理検査は著明な形質細胞浸潤を認め、一部肉芽腫様変化も伴った。形質細胞腫を疑ったが、monoclonalityは認められなかった。胸部・腹部・頭部CT、上部内視鏡検査では異常所見は認めなかった。PETではS状結腸の腫瘤に一致して集積を認めた。腫瘍性病変を否定できず、10月15日S状結腸切除術を施行した。病理結果は上皮の再生変化、著明な繊維化、炎症細胞浸潤を認め、MALTリンパ腫の可能性は否定できないながらも確定はできず、消褪傾向にあることより、炎症性腫瘤と診断した。興味深い形態を示し診断に難渋した大腸腫瘤の一例を経験したため報告する。