日本消化器内視鏡学会甲信越支部

31,横行結腸の過形成変化の中央に腺癌を認めたLSTの1例

山梨県立中央病院 消化器内科
佐々木 香、小嶋裕一郎、松井 啓、鈴木洋司、望月 仁、廣瀬雄一、高相和彦
韮崎市立病院 内科
三澤綾子

 症例は71歳、女性。2004年12月便潜血反応陽性のため某院で大腸鏡検査を実施し、横行結腸にIIa様病変を認め、生検にてgroup 5であった。EMR目的で2005年1月同院で再度大腸鏡検査を実施した。この際にIIaと認識された病変周囲に一段低い隆起を認め、生検で過形成であった。このため当院紹介となり同年3月入院となった。注腸造影では横行結腸に大きさ10mmのLSTの部分に、一段高い4mmの隆起を認めた。拡大観察では病変の中央はIIIs型pitを呈し、周囲はII型pitであった。入院後切開剥離術により内視鏡的切除術を実施した。切除標本の病理所見では、病変の中央は粘膜内にとどまる中から高分化型腺癌でその周囲は過形成性変化であった。過形成ポリープは一般的に癌とは関連がないと考えられているが、本症例は過形成性変化の中央に中から高分化型腺癌が認められ、過形成性ポリープと癌の関連を考えるうえで示唆に富む症例と考えられ、文献的考察を加えて報告する。