日本消化器内視鏡学会甲信越支部

29,ヘリコバクター・ピロリ除菌中に出血性腸炎を発症した1例

千曲中央病院 内科
小野知巳、宮林千春、金 辰彦、窪田芳樹

 症例は61歳男性、2004年8月10日出血性胃潰瘍と診断され、オメプラゾール(20r×2回/日)点滴3日の後ランソプラゾール(30r)8週間内服、H2ステージへの改善を確認された。11月2日尿素呼気試験陽性で、ヘリコバクター・ピロリ(H・Pylori)陽性と判断、同日よりランソプラゾール(60r)、アモキシシリン(1500r)、クラリスロマイシン(400r)を開始、11月9日に腹痛、下血を生じ当科受診、除菌治療薬による出血性腸炎を疑われ入院となった。
 大腸内視鏡検査では、下行結腸から直腸粘膜に全周性のびらん、白苔の付着を認め、滲出性の出血を一部に認めた。入院加療として、11月19日の大腸内視鏡検査では、白苔が消失し、軽度の発赤を認める程度に改善していた。
 文献的に、H・Pylori除菌治療時の出血性腸炎の頻度は、0.60%と報告されている。今回、ヘリコバクター・ピロリ除菌治療中に、出血性腸炎を発症した1例を経験したので、若干の文献的考察を交えて報告する。