日本消化器内視鏡学会甲信越支部

25,von Recklinghausen病に合併した空腸GISTおよびCarcinoid tumorの1例

山梨大学医学部 第1内科、2、3
末木良太、北原史章、高橋亜紀子、坂本 穣、清水健吾、大塚博之、中村俊也、 佐藤 公、榎本信幸
同 第1外科
雨宮秀武、鈴木哲也、板倉 淳、藤井秀樹
日本医科大学 第4内科
田中 周

症例は42歳、女性。主訴は黒色便。平成16年12月4日、黒色便、眩暈、動悸があり当科に入院した。既往歴は10年前よりvon Recklinghausen病を指摘されている。入院時身体所見では全身にcaf? au lait spotが散在。検査所見では貧血以外は特に異常所見は認めなかった。上部消化管内視鏡検査所見は十二指腸―空腸移行部に2つのSMT様の隆起性病変を認めたが、いずれも観察時に明らかな出血は認めなかった。肛門側の病変からの生検結果はcarcinoid tumorであった。小腸造影検査では、十二指腸−空腸移行部に37×30mm、その遠位側に15×8mm大の楕円形の陰影欠損を認めた。出血シンチで左側腹部に帯状の集積を認め回腸より近位の消化管出血が疑われた。また空腸の腫瘤より肛門側に出血源となるような病変がないことを確認するため、平成17年1月20日カプセル内視鏡検査を日本医大にて行い、上部空腸より出血があることを確認したが、出血源は同定できなかった。以上より上部空腸のGISTおよびcarcinoid tumorの術前診断にて、同年1月31日当院第1外科で術中内視鏡検査および空腸部分切除術を行った。術中内視鏡検査では回腸末端まで観察し空腸の二つのSMT以外の病変は認めなかった。術後病理所見では、径35×25×23mm のSMTはc-kit陽性のGISTで核分裂像は50視野に2-3個で低悪性度であった。またその肛門側の径15×13×9mmの病変はcarcinoid tumorで、粘膜が広く剥離しており粘膜固有層に多数の血管の新生が認められ、今回の出血はこのcarcinoid tumorが原因であることが推察された。
von Recklinghausen病に消化管の粘膜下腫瘍が合併することは幾つか報告があるが、本症例はGISTおよびcarcinoid tumorが重複合併したものであり、文献的考察を含めて報告する。