日本消化器内視鏡学会甲信越支部

24,ダブルバルーン小腸内視鏡にて診断し得た小腸T-cell lymphomaの1例

佐久総合病院 胃腸科 
及川晴子、堀田欣一、友利彰寿、宮田佳典、米湊 健、森田周子、田中雅樹、高橋亜紀子、小山恒男

【症例】頻回の下血を主訴に受診した50代男性。上下部内視鏡では異常を認めず、CTにて骨盤腔内に限局性の小腸壁肥厚を認めた。Gaシンチグラフィーにて同部に淡い集積を認め、可溶性IL-2 receptorが745U/mlと高値であったことから、小腸の悪性リンパ腫を疑った。経口的にダブルバルーン小腸内視鏡(以下DBE)を行ったところ、深部空腸に3/4周性で多数の白苔付着を伴う壁肥厚を認め、生検にて悪性リンパ腫と診断した。経肛門的DBEも併用して小腸全域の観察を行い単発病変と診断し得たため、腹腔鏡下に小腸切除術を施行した。切除標本は35×65mm大で中心潰瘍を伴う亜全周性の隆起性病変であった。病理学的には多形を有する大小不同のリンパ球様異型細胞の増殖を認め、免疫学的にCD3+,CD20-,であることからT-cell lymphomaと診断した。深達度はseでリンパ節転移は認めず、StageTEであった。術後8ヶ月無再発生存中である。
【結語】DBEによる小腸全域の観察にて、単発の悪性リンパ腫と診断できたため腹腔鏡下の術式を選択し得た。